オレオレ理論理論

人を育てるのは難しい。

僕だけだろうか。人を育てようと思うと、ついしゃべりすぎてしまう。 今まで僕が経てきた遠回りを、無駄な時間を経ずに、最短の道を示してあげたいと思ってしまう。自分が経験した苦しい思いをすることなく、効率的に前へと進んでほしい。そう思うと、つい、自分が得てきた経験と、経験を通して見出した作戦、理論、原則、方法論をつい、他人にしゃべり倒してしまう。

しかしである。最近気づいたのだが、そうやってしゃべっても、人は成長しない。理由は、「戦略と実行だと、実行の方がボトルネックだから」である。

物事を成し遂げる時のプロセスを、「戦略」と「実行」に分けて考える。戦略という言葉は大袈裟だが、作戦でも理論でも方法論でも何でもいい。とにかくそういうものである。

一見すると、成果を出すために必要なのは、戦略だと思ってしまう。「知らないからうまくいかないんだ」「気づいてないんだ」と思ってしまう。だから、自分が編み出した戦略、理論、方法論、原則を、人は人に伝えようとする。「これさえ知っていればうまくいくんだ。実際に自分はこれをやってうまくいったのだから」と。

しかし、そうやって伝えられた戦略は、残念ながら実行されない。

無理やり他人に実行させることが可能なこともあるだろう。例えば、上司、部下の関係で、強権を発動して実行させることは、ある程度可能かもしれない。が、それは上下関係があり、強い権力がある状況でしか機能しないし、長期的には持続可能でないことも多いだろう。

実行しないのはなぜか。本人が心の底から、その戦略を信じていないからである。他人が見つけ出した理論を、いきなり鵜呑みにして信じるのは難しい。

そんな中無理やり実行させようとすると何が起きるか。言い訳である。「今の状況にはあっていないから」「自分にはあってないから」「今忙しいから」などなど。とにかく実行されないのである。

戦略と実行では、実は、実行の方がボトルネックなのである。そもそも、世の中の原理原則は、たいてい、聞いてみると「当たり前」である。当たり前かつ面倒なものである。「わかっちゃいるけどめんどくさい」というものが多い。「当たり前のことを当たり前にやる」のは難しい。だから実行されない。人は、面倒くさいことを避ける。その結果、存在しない「これさえやればうまくいく!魔法のような方法論・ハウツー!」を求め続ける。やればうまくいく「当たり前のこと」を実行せずに、人はさまよい続ける。その結果うまくいかない。

ではどうすればいいか?

自分で戦略を編み出すしかない。自分が経験を通して、つらい思いを通して編み出した、この世の中の法則、原理原則は心の底から信じられる。「オレが見抜いたオレの理論」である。「オレオレ理論」は、オレの心をとらえて離さない。真実だと感じられる。自分が見抜いたかわいい理論だからだ。だから辛くても実行することができる。

冒頭の問いに戻ろう。人を育てるにはどうしたらいいか?

自分の理論を、他人に無理やり伝えてもどうせ実行されない。無駄である。100伝えて1つも実行されないのであれば、1つも伝えず、1つだけ本人に見つけてもらった方がよっぽどマシなのではないか。つまり、ボトルネックである"実行"フェーズをやり抜くためには、本人に"オレオレ理論"を見つけてもらう必要がある。

人を育てたければ、開きかけた口を閉じよう。

言葉少なくヒントを与えて、やってみさせて、考えさせて、問いを投げかけて、本人に苦しい思いをしてもらい、この世の中の法則を見抜いてもらおう。そしてそれを「オレオレ理論」として、自分で発見してもらう。こうやって人を育てよう。

これが、僕が見つけた「"オレオレ理論"理論」である。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。