死に方を選びたいからトレードを

その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いで行け

おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールを任せるな

――― 中島みゆき 宙船

ちょっと前に、インデックス投資を批判する記事を書いて、ちょっとウケた。

過去記事:インデックス投資家よ、トレードしかできない体にしてやろうか?

これで僕は瞬く間にTwitterの投資クラスタの文壇に駆け上がった。界隈から取材の申し込みが殺到し、仕事は舞い込み、女性ファンは次回作を求め、黄色い声がTwitterの通知欄に響き、投資文学界の大御所になる…ところまでは妄想した。が、現実にはそうはなっていない。

まあそれはさておき、ユーモアに包めば、人に話を聞いてもらえるんだなと勉強になった。

さて、この記事はめちゃくちゃ長いけど、書き始めにはごくごく小さなアイデアしかなかった。僕が感じていたその小さなアイデア、というか、感じていた違和感とは、以下のようなものだ。

「インデックス投資のガチホ戦略は、他人に運転を任せているせいで、死に方を選べない」

この違和感が勝手に(僕の積もり積もった怨念を吸収しながら)膨らんで、こんなに長い記事になってしまったのだ。

結局、何かを人に任せて買って、何もしないということは、全くコントロールが効かない。祈るしかできない。自分の資産がどれだけ目減りしようと何もできないのだ。それが根本の違和感だった。

インデックスガチホ戦略は、その「何もしない」ことが優位性の根本にあるから、コントロールしようとする行為をタブー視する。でも、その行為は、自分の運命のコントロール権を放棄するという代償が必要となる。

たとえ資産が30%減っても、半分になっても、70%減っても、その損をコントロールすることができないのだ。

本当は、みんなどこかに限界があると思う。「これ以上の損は勘弁してくれ」というラインがあると思うのだ。そうなる前にギブアップする、言ってしまえば、自分の運命をコントロールできる権利は、みんなが思っている以上に価値のあるものなんじゃないか?と僕は思うのだ。少なくとも、資産の最大化よりも、もっと先にある前提条件じゃないか?と思うのだ。

僕がアクティブに運用している大きな理由の一つがそれだ。つまり、もし死ぬとしても死に方を選びたいのだ。

言ってみれば僕は、資産運用を単に資産の最大化のゲームだと捉えていない。そうではなく、資産の最大化と、最大の損失の最小化と、プライベートの充実と、という多目的の制約条件付きのゲームだと捉えているのだ。そう考えたとき、最大の損失の最小化を、必須の制約として守ろうとすると、そのためには自分でコントロールするしかなくなってくる。

少しの間、トレードを経験して思うのは、「変化し続けるからこそ、変化に強い」ということだ。確かに、日々の変動を見ているとインデックスよりは大きな波を経験する。でも、常に売買をしているからこそ、売ること買うことに抵抗がないし、ダメだと思ったら現金にして横で見ていることができる。変化し続けているからこそ柔らかくて、大きな衝撃にも柔軟に対応することができる。これが、変化を伴わない柔軟性のない戦略だったら、小さいショックは耐えられても、大きなショックの際に砕け散るんじゃないかという予感がある。

こんなことを考えながら、最近、タレブの「反脆弱性」を読んでいたら、面白い指摘があったので紹介しておく。

たとえば、資産の90パーセントを平凡な現金や価値尺度財と呼ばれるもので持ち、残りの10パーセントをこれ以上ないくらいハイ・リスクな証券で持っているとしよう。すると、資産の10パーセント以上を失うことはないが、膨大なプラスの可能性を秘めている。一方、資産の100パーセントをいわゆる”中程度”のリスクの証券につぎこんだとすると、リスクの計算違いで破滅する危険がある。

(中略)

反脆さとは、冒険心とノイローゼを組み合わせたものだ。ダウンサイドを切り捨て、極端な損害から身を守ると同時に、アップサイド(正のブラック・スワン)が自然とやってくるのを待つ。

反脆弱性[上] 第11章より

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

ここでは、ハイリスクも嫌で、ローリスクも嫌で、その間を取ろうとしてミドルリスクの戦略を取ろうとしたときに、逆にダウンサイドのリスクに脆くなってしまう、という一見矛盾した、危険性が語られている。

ダメな方に転んだ時に、死なないように身を守りつつ、良い方法に転ぶ可能性も探っていく。そういう感じで、コロコロとトレードしながら、柔軟性を保ってやっていきたいなぁ、と僕は思っている。

以上です。Twitterをやっています。

本も紹介しておきます。

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

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