突然、未来が見えるようになった。
1年間、ジムに通い続けることで、僕は未来が見えるようになっていた。ジムにいる間だけ、次に何が起こるか予測できるようになっていたのだ。具体的には、以下のような未来が見えていた。
・あの腹筋をしている老人は、30分間腹筋を続けた後、ジムの端っこのスペースで体をツイストする運動を始める。
・トレッドミルで走っているあのタンクトップの中年は、ベンチ台の前で超ガニ股の中腰で、9kgのダンベルを持って二頭筋を鍛え始める。
・頭にバンドをつけているあのおじさんは、ストレッチが終わったらふくらはぎを伸ばしながら腰をプリプリ振るオリジナル体操を始める。
こんな感じで、ジムの中で次に起きる出来事が、かなり高い確率で予測できるようになっていた。単に、「ずっと通いすぎて、行動パターンが分かるようになった」という話なんだけど。とはいえ、「人って、放っておくと、本当に同じことを繰り返すんだな」と気づいた。
多くの人は、意識的に変えようとしない限り、慣れたルーティーンを繰り返す。その結果、新しい知識がつくわけでもないし、よりよいやり方に変わる可能性もない。ずっとずっと、同じことを繰り返すのだ。それで成長すると信じたまま。
引いて見ると、僕自身もその風景の一部であって、周りから見たら同じことを繰り返している、と思われているのかもしれない。
確かに、トレーニングを始めたあの頃と違って、新しい経験は減っているし、ルーティーン化している。新しい知識への貪欲さも落ちている。僕だってあの30分腹筋老人と同じようなものだと気づいた。ちょっと油断するとこうなってしまう。
このままだと良くない。無理やりにでも何かを変えていこう。ということで、1週間に1つは、新しいトレーニング種目にチャレンジすることにした。うーん、今週は何をやろうか。