パチンコで50万円稼いで学んだ、人間の心理と確率の話。

学生の頃、全てが嫌になって、死にたくなり、とにかく西へ行こうと思った。

原付に乗って西へ西へ。国道に沿ってひたすら進む。

2,3時間くらい走らせ、途中でパチンコ屋を見つけた。僕は、自暴自棄になってお金を捨てようと、初めてパチンコ屋に入った。

その数時間後、僕はホクホク顔で東へ向かっていた。手に入れた5万円で美味いもん食って寝た。

それから僕はパチンコにハマった。暇があればパチンコをするようになり、順調に負けていった。あれって多分、中毒状態だったと思う。大学にもいかずパチンコ屋に行った。どんどん負け続けて、5万円は溶け、-20万円まで負け続けた。

これはなんとかせんと、と思った。当時の僕にとって、20万円は大金だったし、この調子で進めると破滅するのは目に見えていた。

さてどうしよう。

落ち着いて考えた。問題はなんだろう?パチンコにハマってしまったことかしら。いや違う。パチンコで勝てないことだ。今の問題は「負けるゲームにハマっている」ことだ。だから解決策は、1.パチンコを辞める  もしくは  2.パチンコで勝てるようになる  のどちらかだ。

パチンコを辞める?そういう考えにはならなかった。中毒なんだから辞められるわけないって!

ということで、僕は「パチンコで勝つ」ことにした。というか、抜け出すには勝つしかなかった。うーん。カイジみたいだ。勝てるようになれば、楽しいし儲かるし、幸せになれるはずだと思っていた。

勝ちたくて調べていると「無料パチンコ必勝法」という名前の、クソ怪しいサイトを見つけた。そのサイトは、名前とは裏腹に、非常にロジカルに、パチンコの仕組みと「必勝法」について教えてくれていた。

これなら勝てる!僕はそう思った。

パチンコで勝てるわけないって?それ、パチンコの仕組みを分かって言っています?仕組みが分かれば、「勝てるわけない」なんて言えるわけない。断言する。パチンコは勝てるゲームだ。

じゃあ仕組みを説明しよう。パチンコはただの「派手なくじ引き」だ。複雑そうに見えるけど。シンプルに言うと、こんなくじと一緒だ。

「400回に1回当たる。大当たりは2万円もらえる。やりますか?」

さて、このゲームに勝つにはどうしたらいいかわかります?正解は、「1回のくじ引き代が、50円より安い時に何度もやる」ことだ。2万円÷400回=50円だから、計算上は50円で1回くじを引けたら、トントンなのだ。

パチンコで言う「くじ」っていうのは、台の中央にある「ヘソ」という穴に玉を入れることだ。玉が入ると、400回に1回当たるルーレットが回り、当たれば2万円分の玉が出てくる。うん、やっぱりこれは派手なくじ引きだね。

以上から、パチンコに勝つためには、50円以下のコストで、ヘソに玉を1つ入れまくればいい。(50円、って数字は台によって違うけど)。もし45円で入れられるのなら、ヘソに1個入れるたびに5円儲かる計算になる。

と、言うことで、僕はパチンコで稼ぐことにした。詳しい説明は省くけど、より安いお金で何度もルーレットを回すために、色々な工夫をした。こんな感じだ。

・朝9時から夜9まで長時間打つ
・できるだけ出玉で打つ(買うときは1玉4円だけど、売るときは1玉3円とかだから)
・「引き時」などない。期待値がプラスであればひたすら打つ。
・繁盛している郊外の店で打つ(還元する余裕があるはずだ)
・繁盛してる駅前の店で長時間打つ(短時間打つサラリーマンに合わせて釘の調整をしてるはずだ)
・常に今の期待値を計算し、打つべき台を判断する。
・釘をちゃんと見る
・少しでも得をするように止打ち、ひねり打ちをする。
・etc

上記を徹底した結果、-20万円の状態から3か月ぐらいかけて、+30万円まで盛り返した。 (これを「50万稼いだ」と威張るのは少し恥ずかしいのだけれど。すみません。)なお、1日当たりの儲けの期待値は9000円前後で、かなりこちらで計算した期待値に近い値に収束した。

以上の(不毛な)経験から学んだことは、

「確率の理解は、精神の安定につながる」ってことだ。

パチンコ屋にいると、イライラした人が本当に多くいる。台をたたいたり、店員を怒鳴りつけたり、ボタンをものすごい力で連打したり。(それはもう、ボタンに肉親でも殺されたのか?と思わせるような勢いで叩く。結構な迫力があるので、ぜひ一度見に行ってほしい。)

でも僕はまったくイライラしなかった。くじ引きを1000回しても当たらないようなときでも、冷静な状態で一日中打てた。確率について理解していたからだ。400回に1回しか当たらないくじを、1000回引いても当たらない確率って分かります?これ実は8.2%もある。
じゃあ1/2のくじを、5回続けて外す確率は?これは3.1%もある。

僕らは、一日中パチンコ打ち続けるのを何十日とやっているんだから、それくらいの不運は当然ある。でも、「そんなことありえない!」ぐらいの勢いで、怒り狂う人を何十人と見てきた。当然、その不運と同じぐらいの幸運も、訪れているはずなのに、不運の方にだけ目を向けてイライラしている。人間って不思議だな、と思った。

これは勉強になった。確率が分かっていないと、不運や幸運が訪れた時、精神が揺らいでしまうんだと分かった。

こんな感じで、僕は冷静にパチンコを打ち続けた。読書をしながらハンドルをひねる。(国会中継を見ながら打っている日もあった。)

光と音で、大当たりになったと気付き、本を閉じる。チャッカーに入る玉を、うつろな目で数え続ける。1, 2, 3, …7,8。最後の瞬間に2玉放り込むのを狙ってハンドルを大きくひねる。(ひねり打ちという)大当たりの時間が終わると、増えた出玉の数を計算する。そして、僕はまた本に目を落とす。隣の人間が吐くタバコの煙を吸わないように、呼吸のリズムを合わせながら本を読む。こんな生活をつづけた。

僕はパチンコで勝てるようになった。そして僕は、パチンコを辞めた。

なぜかって?面白くないからだ。分かるでしょう?面白くなさそうでしょう?勝てるゲームになった途端、僕の中でパチンコは仕事になっていた。一日中パチンコを打った帰りに、「今日は8.2%の不運を引いて、4万負けたけど、期待値は+12000円だった。うーん、いい仕事したなぁー」なんてことを一人呟きながら原付に乗って帰る。そんなの楽しいわけがない。しかも日給9000円ってなんだ。一日中座りっぱなしで副流煙吸い込みながら玉を数える仕事をするぐらいなら、普通に働いたほうが楽しいし儲かるじゃないか。

そんなわけで、パチンコは辞めて就職し、普通のサラリーマンとして働いている。日給は9000円よりは上だ。

今振り返ってみると、パチンコをすることで、興奮して歯止めが効かない負け組の脳みその状態を体験できたり、確率の揺らぎと、それに対して人間がどう感じるのかを、身をもって知れたのは、本当にいい経験だった。おすすめはしないけど。

あと、パチンコを辞めたい人は、辞めなくていいと思う。とりあえず勝てばいいと思う。自然と辞められるはずだ。

以上です。Twitterやっています。よろしくお願いします。

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